最近、社内PCに導入している軽量AIモデル「Phi 2.7B」や「Mistral 7B」の使用頻度が増えています。これらは大規模LLMと比べてコンパクトながら実用性が高く、ローカル実行やファインチューニングにも対応しており、開発現場での応用にも向いています。今回はその中でも特にMicrosoft製の「Phi 2.7B」について、技術的な構造や利用方法、ファインチューニングのヒントを解説してみます。
Phi 2.7Bとは?―「小型でも高性能」なMicrosoft製モデル
Microsoft Researchが2023年12月に発表したPhi-2(2.7B)は、「小さくても賢い」AIを目指すSmall Language Model(SLM)の一つです。27億のパラメータを持ちながらも、LLaMA-2 70Bに匹敵する性能を示し、特にプログラミングや論理的推論の分野で評価されています。
学習データには教育的・安全性に配慮したフィルタ済みのWebデータが使われており、チャット、QA、コード生成など幅広いタスクに対応可能。ノートPCやモバイルデバイスでも実行できる軽さが魅力です。
Transformer構造を理解する:Layerの積み重ねが生む「思考力」
Phi-2.7Bは、Decoder-only型のTransformerアーキテクチャを採用しています。この構造は複数の「Layer(層)」の繰り返しで成り立っています。
1つのLayerには以下の構成が含まれます:
LayerNorm(正規化)
Masked Multi-Head Self-Attention(未来トークンを見ない注意機構)
残差接続
Feed Forward Network(FFN、非線形変換)
これらが24〜32層程度積み重なって、複雑な関係性の理解や推論を可能にしています。Attention Overflow(精度の劣化)に配慮した設計もあり、計算資源の少ない環境でも安定動作が見込めます。
「Phi」は何の略?その哲学とオープン性
「Phi(Φ)」という名前には明確な略称は示されていませんが、**「Philosophy of small models(小型モデルの哲学)」**という意味が込められていると考えられます。黄金比や思索を象徴するギリシャ文字Φが名前に使われている点も、研究開発志向を感じさせます。
また、Phi-2はMITライセンスのもとで公開されており、商用・改変・再配布が自由。Hugging Faceにてモデルとコードが入手可能で、研究用途だけでなく実務にも幅広く活用可能です。
ファインチューニングに挑戦:LoRA+Ollamaでローカル最適化
すでにOllama上でPhi 2.7Bを実行している方には、次のステップとしてLoRAによるファインチューニングをお勧めします。
基本ステップ
学習データの用意(JSONL形式:
{"prompt": "...", "response": "..."}
)Modelfileの作成(Ollama用設定ファイル)
LoRAトレーニング実行
カスタムモデルの保存・確認
LoRA(Low-Rank Adaptation)は、元のモデルを保持しながら少数のパラメータのみを学習するため、リソース効率が非常に高く、個別用途への適応が容易です。学習率やエポック数などの調整も柔軟に可能です。
まとめ:Phi 2.7Bは「使って学ぶ」時代の学習パートナー
Phi 2.7Bのような小型モデルは、ローカル環境での応用やエッジデバイス展開の実験にぴったりです。Microsoftによる研究的な意図もあり、構造や訓練データもある程度開示されているため、理解を深めながら使いこなすことができます。
私は導入済みのOllama環境を活用して、次はファインチューニングに挑戦してみます。さらなる実践のヒントを探し、どんどん続報をお届けします。
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