AIやRAG(Retrieval-Augmented Generation)を学び始めると、
「ベクトル化」「インデックス化」「ベクトル検索」「依存関係管理」
といった専門用語が頻出します。しかし、これらがデータベースの
仕組みとどう関わっているか分かりにくい方も多いでしょう。
実際には、これらはAIやデータベースを連携させる基盤的な
技術であり、検索の精度やシステムの安定性を左右します。
さらに最近では、PostgreSQLに「pgvector」という拡張を
導入することで、リレーショナルデータベースにベクトル検索機能
を組み込み、Railsアプリと連携してRAGを構築することも
可能になっています。
本稿では、これらの技術をかみ砕いて解説しつつ、
RDBとベクトルDBの関係、意味的検索の仕組み、
そして実際の構築パターンを整理します。
1:ベクトル化・インデックス化・検索の仕組み
1.1:ベクトル化とは何か
テキストや画像など非構造化データを、数百次元の数値列に変換すること。
例:「カフェ」→ [0.12, -0.98, 0.33, …]。
これにより「意味の近さ」を数値で比較できるようになります。
1.2:インデックス化の役割
保存されたベクトルを効率的に検索するための構造を作ること。
代表例:HNSW(グラフ探索型)、IVF(クラスタリング型)。
膨大なデータの中から素早く候補を絞ることができます。
1.3:ベクトル検索の実際
クエリをベクトル化し、保存ベクトルと類似度(コサイン類似度・ユークリッド距離・内積)を計算。
「喫茶店」と検索すると「カフェ」「コーヒーショップ」が近い結果として返ります。
章まとめ
ベクトル化は「意味を数値に翻訳」する工程であり、インデックス化は「効率よく探すための道具」です。検索自体は類似度を計算するシンプルな仕組みですが、この基盤があることでRAGやAI検索の実用性が大きく高まります。
2:「意味的近さ」と不確実性の扱い
2.1:意味的近さの基準
コサイン類似度:角度の近さ
ユークリッド距離:直線距離
内積:大規模モデル学習に多用
👉 「どの基準を採用するか」で意味的関連の定義が変わります。
2.2:関連性の保存方法
ベクトルDBは関連性そのものを保存しません。保存するのは「ベクトル埋め込み」。検索時に動的に距離計算を行うため、常に最新の「近さ」が評価されます。
2.3:検索対象の広がり
厳密検索では全件比較(非効率)。ANNでは数十〜数百件を探索し、上位10〜50件を返すのが一般的。HNSWなどのインデックスで速度と精度を調整します。
章まとめ
意味的近さは「どの距離関数を使うか」で定義され、検索は保存されたベクトルをもとに動的に計算されます。結果として返される範囲は設計次第であり、効率と精度のバランスをどう取るかが鍵です。
3:RDBとベクトルDBの関係・実装
3.1:LLMの保管とRAGの仕組み
LLMは知識を「パラメータ空間」として保持。
RAGでは、質問をベクトル化→外部ベクトルDBから関連文書を検索→LLMに渡して生成、という流れで動きます。
3.2:PostgreSQLとpgvector
PostgreSQLはRDBですが、pgvector拡張でベクトル型カラムを扱えます。
SQLで ORDER BY embedding <-> query_vector LIMIT k
と記述し、類似検索が可能。
RDBにベクトルDB機能を統合できるのが強みです。
3.3:RailsでのRAG構築
Rails + PostgreSQL(pgvector)を使えば、FAQ検索やログ解析、ナレッジベース検索をアプリ内で完結可能。
外部の専用DB(PineconeやWeaviate)に比べて依存関係が少なく、再現性・運用性に優れています。
章まとめ
LLMは内部知識を持ちながら、RAGでは外部データベースを呼び出して回答を補強します。PostgreSQLにpgvectorを組み込むことで、RDBとベクトルDBのハイブリッド運用が可能となり、Railsなどの既存アプリ基盤に自然に統合できます。
一覧表:RDBとベクトルDBの違い
項目 | リレーショナルDB (PostgreSQL) | ベクトルDB (pgvector拡張含む) |
---|---|---|
データ形式 | 行・列形式 | 多次元ベクトル |
主な用途 | 構造化データ管理 | 意味的検索・類似検索 |
検索方法 | SQL(条件一致) | 距離計算(コサイン類似度など) |
保存対象 | レコード | ベクトル埋め込み |
強み | トランザクション、整合性 | 意味理解、検索精度 |
実装例 | Rails + ActiveRecord | Rails + pgvector |
全体まとめ
ベクトル化・インデックス化・検索・依存関係管理は、AIやRAGの実用化に欠かせない基盤技術です。PostgreSQLのpgvector拡張は、RDBの強みを生かしながらベクトル検索を取り込む現実的な解法です。Railsプロジェクトに統合すれば、シンプルかつ再現性の高いRAGを構築できます。
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