AI覇権は電力と鉱物が制する ― データセンター電力争奪戦と中国精錬支配が変える世界秩序

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生成AIの急拡大は、単なる技術競争ではなく「電力」と「資源」を巡る国家間競争へと姿を変えつつあります。日経新聞は「AI覇権は電力が制する」と報じ、米国ではデータセンターが送電網に接続するまで1~3年、北バージニアでは7年待ちという異常事態が起きています。背景には送電・変電設備の不足と、AIによる電力需要の爆発があります。さらに電力不足を補うため、スリーマイル島原発の再稼働まで検討されるなど、エネルギー政策は大転換期に入りました。同時に、AIや電池に不可欠なレアアース・コバルト・リチウムなどの重要鉱物では、中国が19種類で精錬後市場の約70%を支配していると国際機関が指摘しています。電力網と鉱物精錬という「見えにくい中間インフラ」を握る国が、次の世界秩序を左右する時代です。本記事では、AI時代の電力制約、送電インフラの現実、原子力回帰の動き、そして中国の鉱物精錬支配と日本の対策までを体系的に整理します。

1:AIが引き起こした電力争奪戦

生成AIは膨大な計算資源を必要とし、データセンターの電力消費は国家規模の需要に達しつつあります。しかし電力供給は発電能力よりも「送電・変電インフラ」がボトルネックとなり、米国ではデータセンターが電力接続を得るまで数年待ちが常態化しています。AI開発競争の裏側で、送電網増強の遅れが新たな制約条件となり、「電気を確保できる企業・国家がAIを制する」構図が現実化しています。

1-1:なぜ送電線接続は1~7年待ちなのか

米国ではAIデータセンターの立地申請が急増し、変電所・送電線・大型変圧器の建設が追いついていません。変電所新設には計画から完成まで5年以上かかり、大容量変圧器の調達にも3~4年を要します。特に北バージニアは世界最大のデータセンター集積地で、送電網が飽和状態にあり、接続待ちが最長7年に達しています。建物が完成しても「電力が来ないため稼働できない」データセンターが実際に発生しているのが現状です。

1-2:変電設備が不可欠な理由(日米の電圧構造)

長距離送電は高電圧で行い、需要地で低電圧へ変換する必要があります。
米国の送電電圧は115~765kV、日本は275~500kVが主流です。一方、利用側は米国120V、日本100Vと数千分の一に落とします。この巨大な電圧変換を担うのが変電所と変圧器であり、データセンター増設には必ず新規変電設備が必要になります。つまり「電力は余っていても、変電設備がなければ使えない」という構造が接続待ちの本質です。


2:電力不足が生んだ原子力回帰 ― スリーマイル島再稼働

AI電力需要の急拡大は、米国のエネルギー政策にも転換を迫っています。象徴的なのが、1979年事故で知られるスリーマイル島原発の再稼働計画です。停止していた原発を再び稼働させ、データセンター向けに長期電力供給契約を結ぶ動きは、「AI時代の電力確保」を最優先する国家戦略の現れといえます。

2-1:スリーマイル島再稼働の概要

再稼働対象はTMI-1(2019年停止)で、運転会社はConstellation Energy。Microsoftが20年の電力購入契約を締結し、米エネルギー省が巨額融資を提供しています。2027年前後の再稼働を目指し、老朽設備の更新とデジタル制御化が進められています。事故の象徴だった原発が「AI電力供給拠点」として復活する点は、エネルギー史的にも大きな転換です。

2-2:原子力回帰が示す地政学的意味

米国はAI競争で優位を保つため、安定大容量電源として原子力を再評価しています。再エネは拡大しているものの、データセンターの24時間安定運転にはベースロード電源が不可欠だからです。電力確保はもはや経済問題ではなく「AI国家戦略の根幹」となっています。


3:もう一つのボトルネック ― 中国が支配する重要鉱物精錬

AIサーバー、半導体、EV、蓄電池には大量のレアアース・リチウム・コバルト・グラファイトが必要です。国際エネルギー機関は「追跡する20種類の重要鉱物のうち19種類で、中国が精錬後市場の約70%を占める」と指摘しています。採掘地は分散していても、「精錬して使える材料にする工程」が中国に集中していることが、最大の地政学リスクとなっています。

3-1:中国の精錬支配の実態

例えば、
・バッテリー用グラファイト:精錬シェア約90%
・リチウム化学品:約70%
・コバルト精錬:約70%
・磁性レアアース:約80%

鉱石は豪州やアフリカで採れても、最終製品は中国工場を経由しなければ完成しない構造です。中国はすでにガリウム・グラファイトなどで輸出規制を発動し、外交カードとして活用しています。

3-2:電力と鉱物の「二重依存」が生む新秩序

AI時代の覇権は、
①電力インフラ
②鉱物精錬インフラ
という二つの中間工程を押さえた国が優位に立ちます。米国は電力で、中国は鉱物精錬で強みを持ち、欧州・日本は両面で依存を抱える構図が浮かび上がっています。


4:日本はどう備えるのか ― 電力網と資源戦略

日本もAIデータセンター誘致を進めていますが、送電網増強の遅れや電源制約は同様の課題です。また重要鉱物の大半を輸入に依存しており、中国精錬依存からの脱却が急務となっています。政府と企業は「電力網強化」と「鉱物サプライチェーン再構築」の両面で対策を進めています。

4-1:日本の電力インフラ対応

国内でも大規模データセンター接続に伴う変電所増設が必要となり、系統接続審査に数年を要するケースが出始めています。政府は送電網の広域連系強化、系統増強投資の前倒し、原子力再稼働・再エネ拡大による電源確保を進めています。AI産業振興と電力政策は不可分となりました。

4-2:鉱物戦略 ― JOGMECと国際連携

日本はJOGMECを通じて豪州・カナダ・アフリカの鉱山投資を拡大し、米国・EUと「重要鉱物同盟」を構築しています。また国内でのリサイクル技術開発や、電池材料の代替研究も加速中です。ただし精錬工場の建設には5~10年を要し、短期的な中国依存は続く見通しです。


総括:AI時代の本当の覇権条件

AI競争の勝敗は、
「優れたモデル」よりも
「安定した電力」と「安全な鉱物供給」
を確保できるかで決まりつつあります。

送電網と変電設備、原子力回帰、鉱物精錬支配――
これら“中間インフラ”を巡る争奪戦こそが、次の世界秩序を形づくります。

技術だけを見ていては見えない、
AI × 電力 × 資源
の三位一体構造を理解することが、これからの産業戦略の出発点となるでしょう。

〆最後に〆

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