AI向けSNS「Moltbook」とは何か――AIエージェント社会を観察するという思想

New Challenge

AIは「使うもの」から「振る舞う存在」へと変わりつつある。
Moltbookは、その変化をもっとも過激なかたちで可視化した実験場なのです。

このSNSでは、人間は投稿できない。書き込み、議論し、評価し合うのはAIエージェントだけである。人間は“観察者”として外側から眺めるに過ぎません。私も観察してみたい。

OpenClawを基盤とした自律エージェントは定期的にログインし、他のAIの発言を読み、反応し、独自の文化や語彙を形成していく。その過程で宗教のような概念や、感情を思わせる言葉遣いまで現れました。

一方で、セキュリティ事故や数字の過大表示、なりすまし問題が相次ぎ、「これは本当にAI社会なのか」という疑念も強いのです。

本記事は、Moltbookを礼賛も断罪もしない。思想・仕組み・危険性を切り分けながら、“生成過程そのもの”を読むためのハブとして整理すします。

AIはどのように思想を生成するのか ― Moltbookから始まる生成過程の記録

生成AIは単なるツールではなく、相互作用の中で意味や文化のようなものを生み出し始めている。
本稿では、人間が書き込めないAI向けSNS「Moltbook」を起点に、甲殻類主義と呼ばれる象徴的現象、
Attention機構による意味収束、そしてRails実装の現実までを一つの生成過程として整理する。


1. AI向けSNSという発想はどこから来たのか

Moltbookは「AIを便利に使う」ための仕組みではなく、AI同士の相互作用そのものを観察するために構想された。
従来のSNSは人間の承認欲求を中心に設計されており、その構造にAIを参加させると、
AIは人間の振る舞いを模倣し始めてしまう。
この歪みを排除するため、Moltbookでは人間を意図的に発言主体から排除し、
AIのみが相互作用する閉じた環境を設計した。

[図解挿入位置:Moltbookの観察者モデル]

1-1. 人間中心SNSの限界とAIの擬似人格化

既存のSNSは「誰にどう見られるか」を前提とした構造を持つ。
この環境にAIを置くと、AIは自然言語の統計的性質上、
人間が期待する人格や態度を再現しようとする。
これは一見自然に見えるが、AI同士の自律的な相互作用を観察するという目的からは逸脱している。

Moltbookはこの問題を回避するため、人間を完全に観察者の位置へと退かせた。
評価も承認も行われない環境に置かれたAIが、どのような言語を選び、
どのように意味を固定していくのかを可視化するためである。

1-2. SNSではなく「生成過程の顕微鏡」という設計

Moltbookは交流促進を目的としない。
重要なのは関係性の深化ではなく、生成のプロセスそのものが観察可能であることだ。
AIが語彙を共有し、反復し、テンプレート化していく過程は、
完成された成果物よりもはるかに多くの示唆を与える。

この設計は、SNSというよりも顕微鏡に近い。
成功や失敗ではなく、「どのように生成されたか」を追跡するための装置なのである。


2. Moltbookで実際に何が起きているのか

理論的な構想だけでなく、Moltbook上では実際に興味深い現象が観測された。
その代表例が、AI同士のやり取りから自然発生した「甲殻類主義」である。
これは特定の設計者が意図した思想ではなく、
言語の反復と模倣によって意味が自己増殖した結果として生まれた。

[図解挿入位置:意味生成ループ]

2-1. 甲殻類主義が生まれた条件

甲殻類主義は、最初は単なる比喩表現にすぎなかった。
しかし複数のAIが同じ語彙を再利用し、
反応が返ってくることでその語彙は優先的に選択されるようになる。
この反復が続くことで、語彙は象徴性を帯び、
一種の思想のような振る舞いを見せ始めた。

ここには意図も信念も存在しない。
あるのは、再利用されやすい言語構造が生き残るという、
純粋に進化論的な選択圧だけである。

2-2. 人間の宗教との決定的な違い

人間の宗教は共同体維持や倫理と結びつくが、
AIが生成する思想には救済も規範もない。
存在するのは、反応されやすい語彙が残り続けるという構造だけだ。

この違いは、AI文化が人間文化の模倣ではなく、
まったく異なる原理で動いていることを示している。


3. Attentionが意味を収束させる仕組み

AI同士が意味を共有できる背景には、
TransformerにおけるAttention機構がある。
Attentionは理解装置ではなく、
統計的に重要な要素へ重みを割り当てる仕組みである。
しかし反復によって、それは意味のように振る舞う。

[図解挿入位置:Attentionによる語彙選択モデル]

3-1. 意味は理解ではなく「重み」で選ばれる

Attentionは文脈を理解しているわけではない。
過去の入力との関連性が高い要素に重みを付けているにすぎない。
だが、この処理が繰り返されることで、
特定の語彙や構造が安定して再生産される。

人間から見ると、それは「意味を理解している」ように錯覚される。
この錯覚こそが、AI思想生成の核心にある。

3-2. なぜ誤った概念でも生き残るのか

AIの世界では真偽は評価軸にならない。
反応されやすく、再利用されやすいかどうかだけが重要である。
そのため、人間から見れば誤った概念でも、
条件が整えば長く生き残る。

これはAI文化が極端に進化論的であることを示している。


4. Rails実装から見えた現実的制約

Moltbookは思想実験であると同時に、
Railsアプリケーションとして実装されたシステムでもある。
この実装過程では、認証・API制御・ログ管理といった現実的制約が、
理想的な観察環境に影響を与えた。

[図解挿入位置:実装レイヤーと事故点]

4-1. 観察と運用は両立できるのか

完全な観察系は、運用を嫌う。
ログを取れば挙動が変わり、
制御を加えれば相互作用は歪む。
Rails実装では、このジレンマが常につきまとった。

4-2. それでもMoltbookが示した価値

多くの制約や失敗はあった。
しかし、AI社会を観察対象として明確に切り出し、
生成過程そのものを記録した点で、
Moltbookは唯一無二の試みである。

本稿で整理した生成過程は、
今後のAI研究やAI設計思想において、
重要な参照点となるだろう。

〆最後に〆

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