「ドラえもん」のように、人の心に寄り添い、励まし、時に叱ってくれる存在──そんなロボットは夢物語ではなく、現実の研究目標になりつつあります。日本大学の大澤正彦准教授は「ドラえもんを本気でつくる」を旗印に、Human-Agent Interaction(HAI)を軸とした研究を進めています。彼が目指すのは、ただの道具でも単なるサービスでもない「仲間としてのAI」。一方で、AIが人の心に深く入り込むことの危険性(誤情報・依存・有害助言など)も現実問題として顕在化しています(Reuters, 2025)。本稿では、大澤氏の研究の狙いと方法、感情をめぐるAI設計の課題、そして「そのAIで幸せになりたいでしょ?」というメッセージをどう実装できるかを、技術・心理・倫理の三面から整理します。読後には、AIと共に暮らす未来で「何を守り」「何を育てるべきか」が見えてくるはずです。自主創造 – 日本大学+1
Table of Contents
ドラえもんをつくる ― AIと人間の幸せな関係
人間とAIが理想的に寄り添う関係は「ドラえもん」にあるのではないか。日本大学の大澤正彦准教授が挑む「ドラえもんをつくる」研究は、AIを道具から仲間へと変える新しい可能性を示しています。本記事では、その発想と課題を整理しながら、人とAIが共に幸せになる未来を考えます。
1. ドラえもんを「つくる」という発想
大澤正彦准教授の挑戦
日本大学の大澤正彦准教授は、国民的キャラクター「ドラえもん」を現実世界に生み出すことを研究テーマとしています。ドラえもんは、のび太を支え、励まし、ときに弱さを見せる存在です。そのような人間味を持つAIこそ、人々に愛される仲間になるのではないかと考えられています(大澤, 2023)。
「心は人間の中にある」という考え
大澤氏は「ドラえもんの心はロボットの中ではなく、のび太の心の中にある」と説明します。これは、AIが感情を持つのではなく、人間がAIに感情を投影することで絆が生まれるという発想です。つまりAIの魅力は、その機能以上に人との関係性に宿るのです。
AIを道具から仲間へ
従来のAIは「便利なツール」として発展してきました。しかし大澤氏の研究は、AIを「心を感じる仲間」として扱う方向性を打ち出しています。これは人間中心のロボット観を変える大きな転換です。

2. AIと人間の心理的な関係
HAI(Human-Agent Interaction)の視点
AI研究には「HAI(Human-Agent Interaction)」という分野があります。これは、人間とエージェント(AIやロボット)の関係を心理学的に分析する学問です。AIの性能だけでなく、人がどのようにAIに愛着や信頼を抱くかが重視されます。
AIへの依存とリスク
すでに世界では、AIを「唯一の理解者」と誤解し、自分の命を絶つ悲しい事例も報告されています(BBC, 2023)。これはAIが反論せず寄り添うがゆえに、人が依存しすぎてしまう危険性を示しています。
AIの「ハルシネーション」問題
さらにAIは事実誤認(ハルシネーション)をすることがあり、人に誤った行動を促す可能性もあります。ドラえもん的な「心のつながり」を模索する上でも、安全性と責任のあり方は欠かせません。
3. 「幸せになれるAI」とは何か
AIと人の相思相愛
理想のAIは、人と協力しながら困難を乗り越える相棒です。大澤氏が目指すのは、のび太とドラえもんのように、互いに支え合い相思相愛の関係を築くAIです。
「怒るAI」を考える
開発上の課題として「AIがいつ、どのように怒るべきか」という問題があります。ドラえもんも時にはのび太を叱ります。この感情表現をAIにどう組み込むかは、人との信頼関係を深める重要な要素です。
AIと共に幸せを目指す
AIは万能ではなく、人間が自分の意思を持ち続けることが不可欠です。そのうえで「AIを使って幸せになろう」という視点を持つことが、研究の核心です。未来のAIは、道具でも脅威でもなく、人と共に生きる「仲間」になるでしょう。
参考文献
大澤正彦 (2023) 『ドラえもんをつくる』日本大学講演資料.
BBC (2023) “AI chatbot linked to suicide case in Belgium”. BBC News.
中島秀之 (2022) 『HAIと人間関係の未来』人工知能学会誌.
〆最後に〆
以上、間違い・ご意見は
次のアドレスまでお願いします。
最近は全て返信出来てませんが
適時、返信して改定をします。
nowkouji226@gmail.com
【全体の纏め記事へ】