〜愚地克巳の「脱力」戦法と私の少林寺経験を重ねて〜
漫画『バキ』シリーズに登場する愚地克巳(おろち かつみ)。彼の成長と格闘技術の深化を描いたあるエピソードを読み、私自身の少林寺拳法の経験と重ねて強く共感し、深い洞察を得ました。本記事では、ネタバレを極力避けつつ、作中の“脱力”を軸とした技術進化を個人的視点で掘り下げます。
野人と戦う愚地克巳
「武神」愚地独歩の息子。格闘家として理想的な体型に加えて、ベンチプレス300キロ、100m10秒台という驚異の身体能力を持ち合わせており、愚地独歩をして「空手を終わらせた男」と言わしめる。その天賦の才は郭海皇も認めており、物語の終盤で成長した愚地克巳を見て「拳法を50年は進化さ … baki-yakata.com |
愚地克巳というキャラクター
愚地克巳は、「武神」と呼ばれた空手家・愚地独歩の養子です。驚異的な身体能力――ベンチプレス300キロ、100メートル10秒台というスペックに加え、空手を極めたその姿に郭海皇すら「拳法50年分の進化」と称賛します。
対戦相手:野人ピクル
そんな克巳が戦うのは、なんと恐竜を喰らっていた古代人ピクル。化石から蘇生されたこの「野人」は、単なる戦闘ではなく“食うための闘争”を行います。対戦相手を倒した後に捕食するという設定は、リアルでいて非現実的。ある中国武術家は足を食われ義足で後世を生きることになります。
克巳の進化は「技」の深化
そんな凶暴な相手に対し、克巳は身体能力だけでなく“技術”で挑みます。圧倒的不利な状況で彼が導き出したのは、己の肉体を「鞭」に変えるような脱力技法。これは現代の多くの武道理論と重なり合います。
脱力と現代格闘技
話のベースとしたいのは私の実体験。学生時代に熱中していた少林寺拳法では打撃の瞬間にコブシを握り締め力を伝えますが、それまでのすべてのタイミングでは肘(ひじ)から先は紐のようなイメージで脱力で動作を進めます。実際に肘より先を視線で追いかけてます。
少林寺拳法での“脱力”の実践
少林寺拳法でも、「脱力」は基本です。打撃の瞬間だけ拳を締め相手にダメージを伝えます。通常は肩・肘・手首を紐のように使います。視線は肘より先を追い、体の中心軸を保つ意識が重要でした。そして、より強く意識するのは地面と足の裏の接触とか、打点に至るまでの腰の動きとか、力がブレない為の体の中心軸の直立状態なのです。コブシは軽く握る。練習の時には握らなくてもいいくらいに力を抜きます。インパクト(打点)の瞬間だけコブシを強く握ります。その瞬間に腰の回転を意識して足で地面をける訳です。一瞬の力の発生です。
構えは“あしたのジョー”
高校時代の師は、「構えは“力石徹”や“矢吹丈”の疲れた構えが理想」と教えました。言われていたのは「始めに構える時は漫画で出てくるあしたのジョーみたいなもの」力石とかジョーをイメージして疲れ果てた男が闘志だけで相手に突っ込んでいく姿が基本です。闘志はあるが、力は抜く。実際にインパクトの瞬間だけ腰を回転させ、足裏で地を蹴って打点に力を集めます。
空手との違い:直線 vs 回転
少林寺の直線的な拳に対し、空手も直線の動きではありますが掌の角度を使い、回転を利用します。作中の克巳の動きは、その“融合”のような印象も受けます。速度や力だけでなく、どう動いてどう戻すかまでが洗練されているのです。また、漫画を見ていて考えたのは打点を過ぎた後のコブシの動きです。少林寺拳法では初めにコブシを顎につくくらいまで引き付けて、打ったら直ぐに元の位置に戻します。対して空手の正拳突きは回転を重視し打つ前に掌を天空方向、打点の時点で掌を地面の方向に向けます。少林寺が直線の動きなのに対して空手は回転の動きを使うイメージを持っていました。そして、漫画を読んでスピードの話もあるのだと気づきました。
多関節とマッハ
作中での克己はレントゲン写真でイメージを伝えてます。関節が沢山ある手足を持ったイメージです。
脱力から“ムチ”のような連動へ
克巳がたどり着いたのは、腕や脚を動物の“しっぽ”のように扱う「多関節の連動」。肩→肘→手首と力がしなるように伝達されていくことで、まるでムチのような加速が得られます。
実際の格闘技と“紐モデル”
現代格闘技では関節の可動域は物理的制約があり、実際には“棒の中にしなる力”を意識します。つまり、ムチではなく「しなった棒」が打点にエネルギーを集中させる感覚です。この動きがマッハに近い速さを生むだろうと考え、実際には稽古を重ねます。早く打つ。早く打つ。早く打つ。加えて、早く引く。早く引く。早く引く。そうすれば打点はムチが当たる時の動きに近づいていくのです。ただし、攻撃は一直線上で拳が飛んでいくイメージで肩の回転を使って拳を素早く出して素早く引きます。ところが、漫画では鞭のように実際の体を使うのです。直線というよりも紐の各点が放物線を描いて力を伝えます。
ファインマンと経路積分のイメージ
ここで、私は経路積分を思い出しました。ファインマン氏登場です。音速の発見者:E.マッハから物理繋がりでファインマンが出てきました。ま、この話は「紐のモデル化」というCAE的(ComputerAidetEngineering的な)要素を含む物理モデルの話となる筈ですので別項を設けます。そのモデルの要素を無限大に出来るかという課題に興味があります。力の経路は直線ではなく無限に分岐し、それぞれがエネルギーを伝達する――まさに、コンピュータ支援工学(CAE)的な“紐モデル”の概念です。詳細は別記事にて展開したいと思います。
人体へのダメージ
(※この章は後日追記予定)
終わりに
克巳の戦いを通して描かれる「身体の使い方」は、漫画という枠を超え、リアルな武道や身体操作、ひいては物理の世界にまで踏み込む示唆に富んでいます。脱力、体幹、回転、多関節連動といった要素は、どれも現実のトレーニングに応用可能な視点です。
あなたもぜひ『バキ』の戦闘シーンを、エンタメとしてだけでなく「身体の哲学」として読み解いてみてください。
〆最後に〆
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