日本製AIとオープンAIの著作権リスクを考える ― Tsuzumi2からLlama3への(私的な)視点転換

pika1.0で作成した動画の画像 New Challenge
pika1.0で作成した動画の画像
国産AIモデル「Tsuzumi2」は、著作権配慮やセキュリティ面で高く評価されている。一方、事業規模の小さな企業や個人開発者にとっては、コストや導入負担が課題だ。この記事では「AIが学ぶ回数を抑えれば著作物の複製を抑えられる」という問いを起点に、NTTのTsuzumi2とMetaのLlama3:8Bを比較し、著作権・コスト・技術運用の観点からどちらが中小事業に適しているかを探る。対話形式で進む本稿の結論は明快だ。――現実的な選択肢はLlama3にある。


第1章:著作権リスクと「学習回数」の関係

AIが学習時に著作物をどのように扱うかは、著作権上の重要な論点である。「学習回数を抑える」ことで複製リスクを減らせるとされる背景には、過学習と呼ばれる現象が関係している。モデルが同じデータを繰り返し学ぶことで、特定の表現を「丸暗記」してしまう。これが生成時に再現されれば、著作権法上の「複製」に該当するおそれがある。Tsuzumi2のような国産モデルは、この点を意識し、権利処理済みデータの利用や国内完結運用を採用している。

1.1 学習回数と過学習の関係

コウジ: 「AIが学ぶ回数を抑えれば著作物の複製を抑えられる」と言われるけど、どういう理屈なんだろう?
Copilot: 同じデータを何度も学習すると、モデルが文章を“暗記”してしまう傾向がある。統計的パターンではなく具体的な表現を記憶するんだ。だから学習回数を抑える=過学習を防ぐ=複製リスクが下がる、という構造だね。

1.2 国産AIの著作権対策 ― Tsuzumi2の例

Tsuzumi2は300億パラメータの大規模モデルでありながら、学習データを厳選。公開情報や権利処理済みデータを中心に使用し、著作権リスクを構造的に減らしている。NTTは「ソブリンAI(主権型AI)」を掲げ、学習・運用の全工程を国内で完結させる。

1.3 Tsuzumi2の設計思想と学習環境

項目内容
パラメータ数約300億
学習データ権利処理済みの国内情報+公開データ
運用形態Azure経由API or オンプレ
著作権対策重複学習抑制・フィルタリング

第2章:コスト構造と導入現実 ― Tsuzumi2の壁

理想的な安全運用を実現するTsuzumi2だが、導入コストは中小企業には高いハードルとなる。GPUサーバー導入で約500〜700万円、年間保守や電力費でさらに100万円前後が必要だ。Azure経由の利用は初期費用が不要だが、従量課金が積み重なる。一方、Llama3:8Bのようなオープンモデルなら、RTX4090搭載の汎用PCでも運用可能で、初期投資は70万円以内に収まる。現実的な選択として、多くの企業がLlama3へと関心を移している。

2.1 Tsuzumi2オンプレ運用のコスト試算

項目概算費用
GPUサーバー約500〜700万円(A100 40GB構成)
電力・冷却約3万円/月
保守・ライセンス年間100〜300万円

2.2 Llama3:8Bへの切り替え ― 汎用環境での可能性

コウジ: さすがにTsuzumi2は予算的に厳しい。もう少し小規模でも運用できる方法は?
Copilot: Llama3:8BならRTX4090搭載PCで動かせる。初期コストは約50〜70万円。モデルはHugging Faceで公開されているから、導入も無料だよ。

2.3 コスト比較表

項目Tsuzumi2Llama3:8B
パラメータ数300億80億
初期投資600〜800万円50〜70万円
ランニング費年間100〜300万円年間20万円以下
公開性クローズドオープン(Hugging Face)

第3章:Llama3の現実解 ― 小規模AI運用の道筋

Llama3はMetaが公開するオープンモデルであり、透明性が高く、個人や中小事業者でも実装できる。LoRAによる部分学習や量子化で、学習回数を制御しつつ著作権配慮を設計できる点が特徴だ。Rails+PostgreSQL+Ollamaの構成なら、クラウド費用ゼロでRAG(検索拡張生成)環境が構築できる。つまり「学習回数を抑える」という問いに実装的な答えを出せるモデルである。

3.1 Rails+Llama3+Ollama構成の概要

ローカル環境でLlama3を推論エンジンとして動かし、PostgreSQLに社内文書を保存して検索連携する構成。Sidekiqで非同期処理を行えば、FAQ自動応答システムも構築可能。

3.2 LoRAによる学習回数制御

LoRA(Low-Rank Adaptation)を用いれば、学習の一部のみを再調整可能。これにより過学習を防ぎ、著作物の「複製」にあたる危険性を低減できる。

3.3 コウジの結論 ― 現実的なAIとは

コウジ: 結局、コストと柔軟性を両立するならLlama3が現実的だね。
Copilot: そう。Tsuzumi2は「安心」だが高コスト。Llama3は「自己責任」だが、設計自由度が高い。中小事業には後者のほうが選択しやすいだろう。


補足資料:年表と用語解説

年表:日本製AIの展開

出来事
2023年NTT、Tsuzumi発表
2024年Tsuzumi2(300億パラメータ)公開
2024年後半Llama3シリーズ(8B / 70B)リリース
2025年日本国内で中小企業がLlama3を導入し始める

用語解説

  • 過学習(Overfitting):AIが訓練データを過剰に記憶し、新しいデータへの汎化性能を失う現象。
  • RAG(Retrieval-Augmented Generation):検索と生成を組み合わせ、最新情報に基づく回答を生成する技術。
  • LoRA(Low-Rank Adaptation):少量の追加学習でモデルをカスタマイズする技術。著作権リスク低減にも有効。

    〆最後に〆

    以上、間違い・ご意見は
    以下アドレスまでお願いします。
    全て返信できていませんが 見ています。
    適時、改定をします。

    nowkouji226@gmail.com

    全体の纏め記事に戻る
    雑記の纏め記事に戻る

タイトルとURLをコピーしました