ホンダ系部品大手 Astemo(旧・日立Astemo)は、2025年10月29日付の日経新聞が報じるように、「部品からソフトへ」という大胆な変貌を進めています。自動運転技術の進展に伴い、単体ハード部品の提供から、カメラを軸とした認識ソフト・クラウドサービスの展開へとビジネス構造を転換しつつあります。特に、LiDAR(ライダー)に依存する高コスト構成から、カメラベースの三次元データ処理技術を用い、「コスト10分の1」という競争優位を目指しています。さらに、クラウド開発を支援する新会社設立により、モビリティ領域のデジタル収益源を確保する動きも鮮明です。部品供給という従来型サプライヤーの枠を超え、自動運転・知能化時代における「ソフト主導のハードウェア企業」へと舵を切る同社の戦略を、本稿では3章構成で詳しく紐解いていきます。
① 成り立ちと開発体制の変化
アステモはこれまで、エンジン・ブレーキなどの制御部品を中心に自動車メーカーへ供給してきました。しかし、EV化が進むなかで「ソフトが車を動かす時代」へ移行。車載制御はもはや単体部品ではなく、システム統合とソフト設計が鍵を握るようになっています。
この変化を受けて、アステモは2024年以降、ソフトウェア開発者を大幅に増員し、海外拠点との協業を強化しています。
1-1 設立背景と母体の規模
Astemoは2021年1月に、旧・Hitachi Astemo(旧・日立オートモティブシステムズ)とホンダ系のショーワ、ケーヒン、日信工業が統合して発足しました。ウィキペディア+2electropotalplus.com+2 親会社としてホンダと日立がそれぞれ40%出資し、JICキャピタルが20%を保有するという強固な資本構成を持ちます。
1-2 「部品からソフトへ」の宣言
同社の社長、竹内弘平氏は「部品会社のままでは生き残れない」と明言し、ハードウェア提供からソフトウェア・クラウド連携型企業への変革を掲げています。日経新聞はその方針を「部品から“ソフト”会社に変身急ぐ」と報じています。X (formerly Twitter)+1
1-3 新会社設立とクラウド収益戦略
Astemoは、完成車メーカー向けのクラウド開発支援を目的とした新会社を設立。車載カメラデータとクラウドを結びつけ、自動運転・知能化時代の「ソフト収益源」を確保しようとしています。
章まとめ
部品大手としての母体を背景に、Astemoは「ハード提供者」から「ソフト企業」へ軸足を移しつつあります。経営トップが危機感を持ち、クラウド収益を新たな柱と位置づけた点が転機と言えるでしょう。
② カメラ技術で切り拓く自動運転競争
日経の報道によると、アステモは国内外の技術拠点を再編し、エンジニアの職種構成を「ソフト:ハード=6:4」に転換予定です。また、車載制御の領域ではAIとクラウド技術を導入し、制御アルゴリズムを自動学習させる試みも始まっています。
ただし、課題もあります。既存の自動車メーカーとの協業構造が残るため、仕様変更への柔軟性や責任範囲の再定義が不可欠となります。
2-1 カメラベースによる三次元認識技術
同社が強みとするのは、複数カメラで立体視(ステレオカメラ)し、物体の距離・方向・速度を高精度に捉える技術です。従来のLiDAR1台数万円というコストを、カメラ・ソフト構成でその10分の1に抑える点に注目が集まっています。
2-2 ルールベースからE2E(エンドツーエンド)AIへ
従来、自動運転制御は「認識→予測→判断→制御」というモジュール分割型(ルールベース)で実装されてきました。一方、E2E(End-to-End)型AIは、センサー入力から制御出力までを一括学習・最適化する方式で、画像入力(カメラ)との親和性が高く、高度な認識+判断能力を実現します。
2-3 緊急時対応とカメラの優位性
緊急事態、例えばドライバーが意識を失った場面では、「ドライバー顔・視線の監視」「異常運転の即時検知」などが必要です。カメラ+AIは、顔・視線・動作を捉える点でLiDAR/レーダーより優位に立ち得るため、緊急時対応能力にも直結します。
章まとめ
Astemoのカメラ技術+E2E AIへの注力は、競合との差別化となるだけでなく、自動運転における「知能化」の本質を捉えたものです。ハード部品から脱却し、「目」と「頭脳」を提供する企業へ変貌しつつあると言えます。
③ グローバル協業と日本企業の役割
アステモの変化は、トヨタ・ホンダなど完成車メーカーの「ソフト統合化」戦略とも連動しています。すでに欧州・米国ではボッシュやコンチネンタルが同様の方向に進んでおり、アステモの動きは日本勢の追随とも言えます。
今後は、ソフト開発プラットフォームを共有する形で複数メーカーと連携し、共通仕様化を目指す動きも予想されます。
3-1 トヨタ・NTTとの技術交流可能性
現時点でAstemoと トヨタ自動車 との資本提携は報じられていないものの、トヨタと NTT が5G/クラウド/コネクテッドカーの協業を進めており、Astemoのクラウド・カメラ戦略と親和性が高いと見られます。
3-2 部品サプライヤーからモビリティプラットフォーマーへ
従来、部品メーカーは「完成車メーカーへの部材供給」が役割でした。Astemoはこれを超え、ソフトウェア・クラウドサービスを提供するモビリティプラットフォーマーへの転身を狙います。
3-3 日本のモビリティ産業における競争力再構築
カメラ+AI+クラウドという組み合わせは、コスト抑制・差別化共に有効です。日本企業がグローバル競争で勝ち残るためには、部品製造に固執せず、知能化・サービス化へのシフトが不可欠です。
章まとめ
Astemoの変身は、日本のモビリティ産業が直面する再構築の縮図です。部品という枠を超え、ソフト・サービスを軸にした企業へと姿を変えることで、新たな競争優位が築ける可能性があります。
全体まとめ
Astemoは、単なる部品メーカーではなく、知能化時代のモビリティ企業へと大胆に舵を切りつつあります。カメラ技術を中心に据え、ソフトウェア+クラウド収益を新たな柱とし、部品から「目=認識」「頭=判断」へと価値をシフトしています。ルールベースからE2E AIへの移行、トヨタ/NTTとの技術潮流との親和性、そしてコスト削減という競争軸──これらを背景に、『ソフト主導のハードウェア企業』という新たなモデルが浮かび上がります。日本のモビリティ産業が世界と戦うには、このような構造変革が不可欠です。 Astemoの挑戦は、その一つの答えになり得るでしょう。
〆最後に〆
以上、間違い・ご意見は
以下アドレスまでお願いします。
全て返信できていませんが 見ています。
適時、改定をします。
nowkouji226@gmail.com
【全体の纏め記事に戻る】
【雑記の纏め記事に戻る】
