オープンAI、赤字でも9200億円買収──AIブームが生む「評価経済」の実態

New Challenge

赤字企業である米オープンAIが、創業1年・社員数わずか55人のスタートアップ「io Products」を6.5億ドル(約9200億円)で買収すると発表しました。しかもこの巨額買収は現金を使わず、株式交換で行われます。裏にはソフトバンクグループ(SBG)などの巨額出資によって支えられた「評価経済」の仕組みが存在します。

稼げていないOpenAI社

テック業界で存在感を高めている米オープンAIは稼げない現状があります。マスクのテスラは自動運転2.0を進め稼ぐ方向性を定めているのに対してAIの課題は稼ぐアプリがないことだ。無論、ソフト開発をクローズ化して成果物を課金制にする手段もある。但しその際には学習モデルの形成で課題が残るのです。この問題は後程、別項を設けて議論したいと思います。本稿はOpenAI社の方向模索。SBGに頼るだけでよいのか?という視点です。

OpenAIは2025年の1月に66億ドルの巨額投資を調達しました。生成AIのフロントランナーとして世界の投資家を引き付けているのです。また、後ほど述べまsが株式交換での資金調達という手段があります。但し、考えていけば企業経営で疑問は残る。確実な収益手段を確立しておらず、ビジネスモデルが不明確に思えるのは私だけでしょうか?スタートアップ企業の調達額としては破格で2025年1月現在の企業価値は1570億ドルに上ります。仮に売上高の15倍を企業価値として考えてみるとグーグルやメタに匹敵すると考えることもできる。とはいえ、利益ベースでの判断は厳しいのです。

ニューヨークタイムズ紙によるとオープンAI社は24年に50億ドルの損失を出している。モデル開発に絡む学習、運用、そして人経費とコストはかさんでいくのだ。その点がグーグルと大きく異なる。グーグル社は上場した04年に利益ベースで約6億ドル。時価総額が1500億ドルに達した。05年には約20億ドルを稼いでいる。投資に伴う改修出口が見えていない。またAI開発の競争優位性があるかも重要だ。今後吟味していかなければいけない。オープンAIはNPOが上位組織にあり、調達ごとに組織体制を変えてきている。営利企業としての立ち位置が見えてきていない中での上場維持は難しい。独占禁止法の観点から組織売却も難しいでしょう。

io Productsとは何者か?──買収対象企業の正体

「ジョニー・アイブ氏が設立したioは、AI時代のための次世代端末を構想中とされるが、製品はまだ公表されていない」
The Verge, 2024年5月21日

項目内容
設立年2023年
創業者ジョニー・アイブ(元Appleデザイン責任者)
従業員数約55人
主な事業AI対応端末の企画・開発
製品リリース状況未発表
評価額(買収時)6.5億ドル

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現金は使わない「株式交換」という魔法

今回の買収は、未上場企業同士の株式交換という仕組みを活用しており、オープンAIは現金を一切使わず、5億ドル相当の自社株をio側の株主に譲渡する形で買収を完了させます。

 

オープンAIの評価額が半年で2倍になった理由

「ソフトバンクGは最大400億ドルの追加出資を主導。これによりオープンAIの評価額は3000億ドルに達した」
日本経済新聞(2024年5月24日)

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2024年10月の時点で1570億ドルとされていた企業評価は、SBGの出資によって3000億ドルにまで膨らみました。このように、出資の意志だけで企業価値が2倍になる例は珍しくありません。

評価が評価を呼ぶ──AIバブルの構図

「AI企業のM&Aは現金が動かないケースが多く、評価先行の傾向が顕著だ」
The Information, 2024年5月

買収元買収先金額手法
オープンAIio Products64億ドル株式交換
NVIDIARun:ai約7億ドル現金+株式
MicrosoftInflection AI(人材)非公表移籍契約

AI業界の大型M&A比較グラフ

ソフトバンクの次なる賭け──AIインフラ戦略とリンクする意図

「AIの中核に位置する企業群と連携し、ソフトバンクはインフラから実業への転換を加速させている」
SBG 2025年事業説明会資料

  • 2024年1月:オープンAIと「スターゲート」設立
  • 2024年4月:オープンAIに追加出資
  • 2024年7月予定:半導体企業買収(非公表)
  • 2025年3月予定:第2の半導体企業を買収
  • 2025年内:UAEにAIデータセンター建設

ソフトバンクのAI戦略図

結び──幻想か現実か? 膨らむ評価に市場が問う未来

株式交換で行われた9200億円の買収は、現金を伴わない「評価経済」の典型です。AIという成長分野への期待が、企業価値を実態以上に膨らませる現在。果たしてこの構造は、革新的な資本主義の進化なのか、それともバブルの前兆なのか。今後も冷静な視点が必要です。

〆最後に〆

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